アイアンマンやスパイダーマン、ブラック・ウィドウ、ドクター・ストレンジといったキャラクターは、近年マーベル・スタジオが手がけるMCU(MARVEL CINEMATIC UNIVERSE)によって広く認知されており、今ではMCUを代表するキャラクターとして知られています。そんなキャラクター達が近い将来マーベル・スタジオから離れる可能性があるとして、マーベル・スタジオ(ディズニー)はキャラクターを生み出したクリエイターの遺族に対して訴訟を起こしています。
事の発端は、2021年8月、元マーベルのクリエイターとしてスパイダーマンやドクター・ストレンジを生み出した故スティーブ・ディッコ氏の遺族がそれらのキャラクターの「解除権」をマーベルに通知したことによります。
当時クリエイターが生み出したキャラクターは会社を通して出版されるため、契約の一部としてその会社がキャラクターの使用権を持ちます。ジャンルや時代、作者によっても異なりますが、出版社が使用権を持つことは珍しくありません。その権利の中には先の「解除権」というものが含まれており、それは一定の期間(通常は数十年)が経過した後に、クリエイターまたはその相続人が、出版社の権利を終了させてそれらのキャラクターの権利を創作者に返還する申請が認められるというものです。
もしディッコ氏の相続が認められることになれば、マーベル社は2023年6月をもってスパイダーマンとドクター・ストレンジの所有権を失うことになり、ディズニー傘下のマーベル・スタジオもMCUでこれらのキャラクターを映像化することができなくなります。
The Hollywood Reporterによれば、アイアンマン、ホークアイ、ブラック・ウィドウ、アントマンといった多くのキャラクターの使用権の期限も間近に迫っているとして、現在マーベル社はディッコ氏のほか、スタン・リーやジーン・コーランといったクリエイターの相続人に対して、問題となっているキャラクターはすべて雇われて作られたもの、つまり職務著作物であり、その権利はクリエイターに返還されるものではないという訴訟を起こしているようです。
果たしてマーベルは、勝訴しキャラクターの権利を保持することができるのでしょうか?これについては、成功する可能性は高いと考えられています。2009年、「ファンタスティック・フォー」や「エターナルズ」を生み出した故ジャック・カービーの遺族が、キャラクターの権利を再交渉するために、マーベルに対して同様の請求を行いましたが、裁判ではこれらのキャラクターは雇われて作られたものであり、カービーの遺産には権利解除の根拠がないという判決が下されています。
また、ディズニーも黙ってはいないでしょう。ディズニーにとってMCUはあまりにも巨大で成功しすぎているため、解体を許すことはできませんし、個人がディズニーのような超大企業と長期にわたる訴訟で争うことはできません。現状マーベルが優位というのは間違いありませんが、マーベルを代表するキャラクター達が2023年以降MCUから離脱するという最悪のシナリオも念頭においておく必要があるでしょう。
source : The Hollywood Reporter