マーベル・コミックス原作映画『ファンタスティック・フォー(2015)』に登場するスーザン・ストーム役に元々は黒人の女性をキャスティングするつもりだったそうです。監督のジョシュ・トランクがGeeks of Colorでのオンラインインタビューの中で明かしています。
トランク監督による『ファンタスティック・フォー』は、すでに公開されていた『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット](2005)』、『ファンタスティック・フォー 銀河の危機(2007)』のリブート版として製作されたもの。前2作からストーリーもキャストも一新されており、中でも白人のキャラクターであるジョニー・ストーム(ヒューマン・トーチ)役に黒人俳優のマイケル・B・ジョーダンがキャスティングされたことが発表されると、ファンの間では大きな反発が起きていました。当時そのことからトランク監督は殺害予告など脅迫まで受けていたと言います。
「僕は黒人のスーザン・ストーム、黒人のジョニー・ストーム、黒人のフランクリン・ストームに興味があったんです。でもこのような大規模な映画を作る時は、みんな”どんな大スターが演じるのか”ってことを考えるんですよね。」
ところがそんな候補の中に黒人の女性を含むことは許されなかったようで「いざキャスティングって段階になると、黒人の女性をキャスティングすることにかなり激しい反発があったんです。」と語るトランク監督。当時『クロニクル(2012)』で映画監督としてデビューしたばかりだった新進気鋭のトランク監督の意見は、なぜか当時の20世紀フォックスには受け入れてもらえなかったようです。
ジョニー・ストームはマイケル・B・ジョーダンが、その父親のフランクリン・ストームはレグ・E・キャシーが演じ、なぜか娘のスーザンだけ白人のケイト・マーラが演じることになりました。スーザン役に黒人女性をキャスティングしたかったというトランク監督の意見は至極真っ当な気もしますが、なぜ20世紀フォックスはそれを受け入れなかったのでしょうか。
トランク監督はこのことに対して「抗議してプロジェクトから手を引くべきだった」と述べています。
「振り返ってみると、そのことに気付いた時に手を引くべきだったと思います。あのことは僕が大切にしている価値観ではなかったから。僕はいつも自分の信じることを大切にするんです。たとえそれがキャリアを棒に振ってしまうことを意味していたとしても。だから僕はその問題をに抗議しなかったことを後悔していますし、それは失敗だったと思います。」
『ファンタスティック・フォー』という一大プロジェクトを任された、当時30歳になったばかりの新進気鋭のトランク監督は、脚本家のジェレミー・スレイターと最初から意見が合わずに対立していました。20世紀フォックスは作品の仕上がりに納得せず、再撮影・再編集を要求、監督によれば、プロデューサーのサイモン・キンバーグらが再撮影を仕切り、編集者のスティーヴン・リフキンがトランク監督を余所に「事実上の監督」として編集作業を担当していたそう。
こうした「スタジオ側の意見」によって監督のビジョンが反映されないということは業界ではしばしばあるようです。『スーサイド・スクワッド(2016)』のデヴィッド・エアー監督も、『ジャスティス・リーグ(2016)』の失敗と『デッドプール(2016)』の成功という背景から「コメディにさせられた」ことを明かしています。
source : Geeks of Color