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[ネタバレあり]『ジョーカー』感想・レビュー、ラストについての解説

ヴェネチア国際映画祭で最高評価の金獅子賞を受賞し、「アカデミー賞確実」とまで謳われた衝撃の話題作『ジョーカー』がついに公開されました。本記事では早速そのレビューを書いています。はたして噂に違わぬ内容だったのか?まだ本作をご覧になっていない方は、ぜひ一度ご覧になってから本記事をお読みください。

※ここからは『ジョーカー』本編の内容に触れた記述があります。まだ本編をご覧になっていない方はご注意ください。



『ジョーカー』に込められていたメッセージとテーマとは

『ジョーカー』がなぜ金獅子賞をとるほどに絶賛されたのか。これはもうわかりやすいほどに「貧困と格差」そして「現代の政治観」という社会問題について描かれていたからでしょう。心優しいアーサー・フレック(ジョーカー)はコメディアンとして一花咲かせたいと願いながらも、母と二人暮らしで生活する貧しい身分でした。ピエロの派遣会社のようなところで働いていましたが、様々なトラブルに見舞われて会社をクビにされてしまいます。

アーサーの暮らしているゴッサムシティは貧困によって荒んでいて、ゴミとネズミだらけ。そんな現状に多くの市民はストレスを募らせていました。一方市長候補のトーマス・ウェインをはじめとする金持ち階級の人間は、口では街を救うとは言ってもアーサーのような貧困層の人間を犯罪者のように扱いました。

映画の中でアーサーが地下鉄で3人を射殺して逃亡した後、ニュースに出演したトーマス・ウェインは「犯人はピエロの仮面でも被らないと犯罪も犯せないようなやつだ」とピエロ(貧困層)を批難します。実際このニュースをきっかけにアーサーは意を決したように、社会(富裕層)に対して怒りを向け始めました。



アーサーはその後とあるショーをきっかけに、憧れていたマレー・フランクリンのテレビ番組に出演することになります。その番組でアーサーは自分が地下鉄での殺人事件の犯人だと名乗り出たことで、富裕層が支配する社会に不満を抱えた貧困層達のシンボルとなり、またマレー・フランクリンを番組中に射殺しました。

このロバート・デ・ニーロ演じるマレー・フランクリンはアーサーにとって憧れの、いわば「コメディアンとして自分がこうなりたかった」という理想の人物でした。マレーの番組に出演する夢を持っていたアーサーには、彼が「社会」に対する「希望」でした。そんなマレーはある日、アーサーの鬼スベりしていたショーの映像をテレビで放映してバカにします。この瞬間アーサーは「社会」から完全に見放された気持ちになったのでしょう。番組に出演したアーサーは番組中にマレーを射殺、同時に自分が地下鉄での殺人事件の犯人だと名乗り出たことで、社会(富裕層)に不満を抱えた貧困層達のシンボルとなりました。



問題の妄想について

『ジョーカー』がただの「社会的なメッセージを込めた映画」から「深みのある映画」にしている要素としては、「アーサーには妄想癖がある」という設定が挙げられます。それを現しているのは

①序盤でマレー・フランクリンの番組に自分が出演しているかのような妄想をしていた

②隣人の女性ソフィーと急に親密な関係になったような妄想をしていた

の2点です。

特に②の妄想については、一緒に外を仲良さそうに歩いていたり、一緒に母親の看病をしたりと頻繁に一緒にいるシーンがあったため途中まで妄想とは気づかないほどでした。そしてここで最大の問題になってくるのが一体どこからどこまでが妄想だったのか、ということです。



ラストのシーンでアーサーは病院のようなところでカウンセラーと話しています。手錠がかかっているので、普通に考えるとアーサーが「ジョーカーになった」後、捕まったんだと思いますよね。ですがアーサーがこの場所にいる経緯については描かれていません。マレーの番組出演後、アーサーはパトカーで連行されていた途中に暴徒と化した市民の救急車に襲われ(救われ)、引っ張り出されてパトカーの上で歓声を浴びていました。本当にあれは現実だったのでしょうか?もしかしたら救急車がぶつかってきてパトカーの上で歓声を浴びていたくだりはアーサーの妄想で、本当はマレーの番組から連行されて何事もなくそのまま刑務所に入れられたのかもしれません。番組内でのカミングアウトをきっかけに、ピエロの面をかぶった多くの市民がアーサーを英雄視して過激化したのは間違いありませんが、かつてコメディアンとして他人から認められたかった、承認欲求を満たしたかったがゆえの妄想なのかもしれません。

あるいはラストのシーン以外の全てが妄想だった可能性もあります。最後にアーサーはカウンセラーに「いいジョークを思いついた」と言いながら「きっと理解できないよ」と言ってカウンセラーを殺害(?)しています。この「ジョーク」こそがそれまで僕らが観てきた映画の内容なのかもしれません。地下鉄で3人を殺したことも、マレーの番組に出演したことも、あるいは「笑ってしまう病気」のことも。アーサーは「僕の人生は喜劇だ」と言ってますから、もしかしたら全てアーサーの頭の中で作られただけなのかもしれません。



まとめ

前評判通り、これまでのコミック映画とは全く違うコミック映画でした。まあ『バットマン』シリーズ特有のダークさは健在ですが、終始濃厚といいますか…ずっと暗いです笑 あとは主演のホアキン・フェニックス、もう拍手しかないです。演技力ヤバすぎですね。「笑う」という表現の中にどれだけの種類の感情を込めているのか。この『ジョーカー』観た後だと先代のジャレッド・レトのジョーカーなんて目も当てられません笑 ストーリーはまあまあって印象ですが、ホアキン・フェニックスの演技は観る価値が十分にあると思いました。

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