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アメリカ最大の劇場チェーンAMCがユニバーサル・ピクチャーズと対立 ー 「今後ユニバーサルの作品は上映しない」

新型コロナウイルスの影響により世界中の映画館が閉鎖を余儀なくされている中、新作映画を公開できない映画スタジオは、新作映画をVODなどオンラインで公開する動きが出てきています。

そんななか『ジュラシック・ワールド』シリーズや『ワイルド・スピード』シリーズを擁するユニバーサル・ピクチャーズは先日、アニメ作品『トロールズ ミュージック・パワー』のデジタル配信を開始。予想以上の売り上げを見せたことからCEOのジェフ・シェル氏が「今後はデジタル配信と劇場公開の両方を視野に入れて映画を発表していく」と発表したことに対し、アメリカ最大の映画館チェーンAMCが猛反発の姿勢を示しています。



AMCのCEOアダム・アーロン氏はユニバーサル・ピクチャーズの会長であるドナ・ラングレー氏に向けて「残念なことですが、ジェフ氏の一方的な行動と発表に対して我々に選択の余地はありません。今後AMCはアメリカ、ヨーロッパ、中東における全ての自社劇場でユニバーサルの映画を上映することはありません。」と言い切ったのです。

また「この方針は本日付、および劇場再開に合わせて発効するものであり、中途半端な脅しではありません。」と付け加えたうえで「我々はユニバーサル・ピクチャーズに対してだけ怒っているわけではありません。なにも何らかの罰を与えたいというわけではありませんが、我々との間に誠実な話し合いを設けず、現在の上映方法を一方的に放棄するようなフィルムメーカーにも同様の方針を適用します。」と強気な姿勢を示しました。

そんなAMCの態度に対してユニバーサルは「落胆しています」とコメント、「我々は劇場体験に絶対的な信頼を寄せていますし、それに反するようなことは一切発表していません。先に述べましたとおり、今後も新作映画は映画館にて直接公開し、なおかつ理解が得られた場合にはデジタル配信も同時に展開するつもりです。」と答えました。『トロールズ ミュージック・パワー』のデジタル配信の意図はあくまでも「映画館などの娯楽施設が営業できない状況下で、自宅待機している人々にエンターテイメントを提供すること」であり、「我々は正しい行動をしたと信じている」との意思を示しています。



現在、映画業界は極めて厳しい状況にあります。映画館側も営業できない、スタジオ側も映画を公開できない。そんな中でユニバーサル・ピクチャーズが、劇場の再開を待たずに新作映画のデジタル配信に踏み切ったのは、ある意味仕方のない判断だったと思います。ですが映画館側からすれば、この間デジタル配信によって家庭で新作映画を観れるという感覚が浸透してしまえば、劇場再開後に客足が遠のくことは簡単に想像できます。しかも新型コロナウイルスという未曾有の危機の直後、ただでさえ人がすぐに劇場に戻るとは言い切れない状況なわけです。

とは言え、ユニバーサル・ピクチャーズは前述の通り『ジュラシック・ワールド』や『ワイルド・スピード』といった大ヒット作を多く抱える大型のスタジオです。これらの作品を上映しないとなるとそれは自分の首を締めることになるのでは…AMCよ、本当にそれでいいのか?

コロナ騒動の収束後、エンターテイメント業界のスタンダードはこれまでとは大きく異なったものになるのかもしれません。

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source : The Hollywood Reporter

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