トビー・マグワイア主演、サム・ライミ監督によって2002年に公開された『スパイダーマン』3部作は、現代におけるコミック映画ブームの基礎を築いた名作として今なお愛され続けています。
実はそんな『スパイダーマン』、1980年代から企画されており当初は『ターミネーター』シリーズや『アバター(2009)』といった大型作品を手がけてきたジェームズ・キャメロン監督が脚本と監督を務める予定でした。キャメロン監督が構想していた『スパイダーマン』はライミ版とは大きく異なり、『アメイジング・スパイダーマン2(2014)』のヴィラン、エレクトロを登場させる予定だったと伝えられています。
キャメロン監督は『タイタニック(1997)』を製作するため『スパイダーマン』の企画を辞退、その後多くの制作会社による『スパイダーマン』の放映権を巡っての争いを経てコロンビア・ピクチャーズによって製作されることになります。そしてシリーズ第1作『スパイダーマン』で脚本を務めたデヴィッド・コープによれば、ライミ版『スパイダーマン』は未発表だったキャメロン版『スパイダーマン』の影響を多く受けているというのです。
ライミ版『スパイダーマン』で印象的だったのは、遺伝子改良で生まれたクモに噛まれたピーター・パーカーが自らの手首からクモの糸を飛ばすという設定です。原作コミックではピーターが開発した「ウェブシューター」という機械でクモの糸を飛ばしていましたが、この変更はキャメロン版の脚本にあったものだったと言います。
「キャメロンは非常に素晴らしいアイデアを持っていて、僕は有機的なウェブシューティングのアイデアが好きでした。(そのアイデアは)好む人と好まない人がいましたが、僕は喜んでそれを使用しました。」
原作コミックとは大きく異なるこの設定に当初は多くのファンの間で物議を醸しましたが、後に原作コミックにも取りれられるようになるなど、キャメロン監督の構想していたスパイダーマン像は広く受け入れられるようになります。なお、『アメイジング・スパイダーマン』やMCU版『スパイダーマン』は、原作通りピーターが自作したウェブ・シューターを使うという設定に戻っていました。
また、デヴィッドはキャメロン版の脚本についてこのような印象を持っていたことも明かしています。
「僕は子供の頃、そして大人になってもスパイダーマンの大ファンだったので映画がどのようにあるべきか、というのは自分なりに具体的な考えを持っていました。ですが、彼(キャメロン)は作品を真面目に受け止めていたんです。ピーターを一人の人間として真剣に、スーパーヒーロー映画をジャンルとして真剣に扱っていました。それは今まで見たことのないような作品でしたね。」
スパイダーマンのテーマの一つである思春期のメタファー。ピーター・パーカーというスーパーパワーを手に入れた一人の青年がどのように成長していくのか、今のスーパーヒーロー映画で当たり前のように描かれるヒーローの内面性はライミ版『スパイダーマン』、もといキャメロン監督の発想から始まっているのです。
source : IGN