ファッション界でも多くのファンを抱えるフランスのブランド「Maison Martin Margiela(メゾン・マルタン・マルジェラ)」。実は僕もこのブランドの服やアクセサリーが好きで、大学生の頃からちょくちょく買っています。
「これどうやって着るん…?」てなる異次元なデザインの服もありますが(特にレディース)、シンプルだけど遊びの効いたデザインのものは普段から使いやすく、品とカジュアルさをバランス良く兼ね備えていると思います。
あとはもうちょっとお求めやすい値段だと最高です(笑)
Martin Margielaってどんな人?
「Maison Martin Margiela」を創設した同名のデザイナー「Martin Margiela(マルタン・マルジェラ)」は、今やファッション界では伝説的な存在となっています。
なぜなら彼は、1997年に撮影された写真を最後に、メディアや公の場に姿を現す事はなくなったからです。仕事での雑誌のインタビューなんかもFAXでやりとりするという徹底ぶり。素顔を知っている人は昔から交流のあったごく一部の人のみだそうです。
1957年にベルギーで生まれたマルジェラは、1988年に自身のブランド「Maison Martin Margiela」を立ち上げて、翌年1989年のパリコレクションでデビュー。97年から2003年まではエルメスのデザイナーを担当、2008年にマルジェラ本人はデザイナーとしての現役を引退しています。
初のドキュメンタリー映画「We Margiela」
2019年2月8日に公開されたドキュメンタリー映画『We Margiela』。
ブランド「Maison Martin Margiela」の誕生秘話、そしてマルジェラがファッション界から突然と姿を消した理由とは、そしてタイトルにある「We」が意味する事とは?
実際にマルジェラと仕事をしてきた人達の音声と記録映像を基に作られた映画です。僕は昨日渋谷のBunkamuraで観てきたのでレビュー!
マルジェラの共同創設者、ジェニー・メイレンス
あのマーク・ジェイコブスにもロバート・ダフィーという凄腕のビジネス・パートナーがいるように、マルジェラにもブランディングや経営を担当するパートナーがいました。
それがジェニー・メイレンスです。
真っ白な画面で彼女がマルジェラについて語るところからこの映画は始まります。ジェニーは作中で度々音声のみで登場します。マルジェラはもちろん、ジェニーも一度も作中に姿を現す事はありませんでした。
マルジェラが消えた理由
マルジェラと共に働いていたスタッフのインタビューの中で印象的なやりとりがありました。
彼はマルジェラが引退した後に偶然再会して「なぜ辞めたんだ?」と質問すると、逆に質問されたそうです。
「君はこの業界で歳を取りたいのか?」と。
実はマルジェラは嫌々仕事をしていたのです。もちろんブランドを立ち上げた頃は自由にやれて楽しかったんだと思います。ファッションの常識を壊したかったそうですし。
そして、商業的な興味は一切なかったと言われるマルジェラ。「遊びの期間」が終わって、会社が大きくなるにつれて感じる、プレッシャーや責任はマルジェラにとっては相当なものだったのかもしれません。
マルジェラがブランドを立ち上げて必死になって働き続けて引退するまで、彼は最低賃金で働いていて、私生活には何もなかったそうです。ビジネスとクリエイティブの間に揺さぶられていたマルジェラは、ついに限界を迎えて、ビジネスの波に飲み込まれる前に姿を消したんだと思います。
なぜ「We」なのか
作中で「Maison Martin Margiela」で働いていたメンバーが、この「We」という言葉を使ったことを説明するシーンがありました。
それは「Maison Martin Margiela」が組織として大きくなると、マルジェラにかかる負担はもちろん大きくなっていきます。そこでマルジェラがデザインに集中できるよう、マスコミの対応やコレクションの展開などを全てジェニーを含めた他のスタッフで対応しました。ブランドの頂点でもあるマルジェラはもちろん、ジェニーや全スタッフが体力面でも精神面でも限界を迎えるほどこの「Maison Martin Margiela」というブランドを一丸で作り続けたことで生まれた意識なのだと。
上にも書きましたが、マルジェラは次第に公の場から姿を消すようになっていきました。普通のブランドはデザイナーを取り上げてアイコンにします。ですが「Maison Martin Margiela」は逆で、マルジェラが「存在を消すことで存在している」ブランドであって、それができるのはこうした「We」の意識なのだと思います。
感想・まとめ
映画というよりはその時代のファッション界の記録のようだと思いました。あと単なる「ファッション映画」ではなく、ある程度「Maison Martin Margiela」について知っている人向けって印象でした。確実に万人ウケする映画ではないです。
映画全体を通して音楽が無く、淡々と進んで行くので若干眠くなります(笑)あと、「We」についてのくだりの時は、スタッフそれぞれがみんな同じような内容を話します。
「それさっき聞いたわ」ってなりますが、それぐらいみんな共通の意識を持って仕事していたってことですかね。ただ「We」の意識ってスタッフの一人一人の個性を潰すことにはならないのか…?
もしもマルジェラがビジネスに関心があったら、「Maison Martin Margiela」は存在していなかったのかもしれません。存在していたとしてもまた違った印象だったかもしれませんね。
ジェニーは2017年に亡くなって、今の「Maison Martin Margiela」(正式には現在の名前は「Maison Margiela」)はディーゼルに買収されて、ディオールのデザイナーでもあるジョン・ガリアーノが指揮しています。
映画が面白かったかどうか?どちらかというと面白くはなかった!ですが、作中に出てくる短髪のおばちゃんがカッコ良すぎたっす。あと服欲しい。