DCコミックス原作の『ジョーカー』は、先日のヴェネチア国際映画祭で圧倒的な評価を受けて最高賞の金獅子賞を受賞、コミックス映画史上初の快挙を達成しました。
これまでワーナー・ブラザーズはDCコミックス作品『バットマン vs スーパーマン』を皮切りにDCEU(DCcomics Extended Universe)の世界観を構築し、『ジャスティス・リーグ』や『アクアマン』といった作品を公開しましたが、今や映画史上最大のフランチャイズとなったMARVEL STUDIOSのMCUにはどうも見劣りする印象は否めません。
ですがワーナー・ブラザーズは、今回の『ジョーカー』の成功から今後の戦略が大きく変わっていく可能性があります。
『ジョーカー』を「これまでにないコミックス映画」に仕上げたトッド・フィリップス監督は、『ジョーカー』の企画を初めて提案した際に「MARVELには勝てません。彼らは巨大なベヒーモス(新約聖書に登場する怪獣)ですよ。」とキッパリ言って「なので彼らにできないことをやりましょう」と進言したそうです。
トッド監督が提案したのはMARVEL STUDIOSとは違って、過去の大きな世界とは一切結びついていない完全に独立した作品を製作すること、そして競合他社よりもより過激でダークなテーマを提供することでした。ただ、これまでとは全く関係のない独自の作品とは言っても、もちろんDCコミックスのキャラクター像を忠実に描くことが前提にあり、「みなさんが『マクベス』を様々な解釈でみるように、ただ新しい解釈をするということでした。」とトッド監督は言います。
ジョーカーを演じたホアキン・フェニックスは、自身が出演する映画について「ジャンルや予算の大きさはあまり気にしません。ユニークなビジョンを持つ映画製作者がいるかどうか次第です。」と語ります。
またロバート・パティンソンが主演を務める新たなバットマン映画『The Batman(邦題未定)』はDCEUの作品になるのか、はたまた『ジョーカー』のように完全に独立した作品として描かれるのかはわかりません。いずれにせよホアキン・フェニックス演じるジョーカーとの共演は確実になさそうですね。これからのワーナー・ブラザーズによるDC映画の戦略にも注目が集まります。
『ジョーカー』は2019年10月4日に公開
source : The New York Times