トッド・フィリップス監督の新たな解釈によって、アメコミ界屈指のヴィラン「犯罪王子」ジョーカーの誕生を描いた映画『ジョーカー』は、公開から3週目となった現在でアメリカ国内での興行収入が2億5000万ドルを突破、世界中で約7億4000万ドルを記録しています。
『ジョーカー』がここまで爆発的なヒット作品になった背景には、先のヴェネチア国際映画祭で圧倒的な評価を受けたという前評判と、実際に映画を観た人達の間で巻き起こった多くの議論によるものだと言えます。Cosmscoreのシニアメディアアナリストのポール・デルガラべディアン氏は「『ジョーカー』は北米だけでなく、国際的にも賞賛されて話題や論争を呼びました。心に強く響いた映画として、映画愛好家達の映画リストのトップに挙がっています。」とコメント、本作はワーナー・ブラザースの年間売上最高額を記録しているだけでなく、同社で最高の興行収入を記録している『アクアマン(2018)』の11億5000万ドルを更新する可能性も出てきています。
そんな『ジョーカー』ですが、ワーナー・ブラザースは『ジョーカー』の企画当初、その内容から製作を頓挫させようとしていたことが明らかになりました。
The Hollywood Reporterによると、ワーナー・ブラザーズの一部の幹部は当初、トッド監督の考えるこれまでにないジョーカー像と、バットマンとは関係のない設定(厳密にはゴッサムシティなど、関連性のある世界観ではありますが)、さらにこれまでのスーパーヒーロー映画とは一線を画する暗すぎる内容にかなり懐疑的だったそうです。そしてワーナー・ブラザース側はこの『ジョーカー』の企画を諦めさせるために、通常のスーパーヒーロー映画製作に充てられる約半分の5500万ドルという少ない予算を提示しました。
にも関わらずトッド監督は撮影を決行、結果『ジョーカー』は予算の10倍以上を売り上げる大ヒットとなりました。莫大な予算を必要としなかったその背景には、トッド監督がこれまでのようなコミックス映画を作るつもりがなかったことが挙げられます。
『ジョーカー』を「これまでにないコミックス映画」に仕上げたトッド監督は、『ジョーカー』の企画段階で「マーベルには勝てません。」「彼らにできないことをやりましょう」とワーナー・ブラザーズに提案しており、過激でダークな作品というDCコミックスの持ち味を活かした単独作品を作り上げたのでした。
『スーサイド・スクワッド(2016)』にて最も最近までジョーカーを演じていたジャレッド・レトも、『ジョーカー』の企画段階でプロジェクトを中止させるようワーナー・ブラザーズに働きかけたと言われていますが、これらの逆境をものともせず『ジョーカー』はR-指定映画の王座に向かって突き進んでいます。
source : The Hollywood Reporter