マルチバースやパラレルワールドという言葉をご存知でしょうか。僕たちが住む世界と並行して存在する別の世界を指す言葉で、よくSF映画などで登場する設定でもあります。マーベル作品『スパイダーマン : ファー・フロム・ホーム(2019)』でもクエンティン・ベック(ミステリオ)が「別の世界から来た」と言っていましたし、『ドクター・ストレンジ(2016)』ではミラー次元や暗黒次元といった様々な次元(マルチバース)が紹介されました。そんな並行世界、映画の世界だけの話と思いきや、どうやら現実に存在している可能性が!?The New Scientistが報じています。
NASAの研究チームが、南極で「インパルス過渡アンテナ(通称ANITA)」を巨大な気球に乗せて上空から観測を行うという実験を行ったところ、「あり得ない現象」を確認したと言います。
通常、地球には宇宙からニュートリノと呼ばれる低エネルギーの素粒子と高エネルギーのタウニュートリノという素粒子が降り注いでいます。ニュートリノは原子質量が小さいことから地球を完全に通過することができる一方、タウニュートリノは地球上の陸地など固体物質に触れると動きが止められてしまいます。
これらの粒子は宇宙から「降下」してくることで検知することができていましたが、報告書によれば地球から「上昇」してくるタウニュートリノを検知したと言います。前述の通り、タウニュートリノは固体物質に触れると動きが止まるため、地球の裏側から陸地を通過してくることはできません。
この発見についてANITAの研究チームは「粒子が時間を逆行している」可能性があるとし、「138億年前のビッグバンの瞬間に2つの宇宙が形成されたのではないかと考えます。もう一つの宇宙は我々の世界から見ると、ポジティブはネガティブに、左は右に、時間は逆行しているという鏡のような世界です。」と報告しています。
複数の宇宙が存在しているという考え方は、かねてより物理学者をはじめ、多くの科学者の間で議論されており、かの有名な車椅子の天才科学者スティーブン・ホーキング博士もマルチバースが存在することを前提にした仮説や宇宙論を多数発表しています。今回の発見はそんな多元宇宙存在説を一歩前進させたのかも…
とは言え、ANITAの主任研究員であるピーター・ゴーラム氏は、ANITAの誤作動や新たな素粒子の可能性など、多元宇宙存在説に対して懐疑的な意見も主張しています。僕ら人類がこの真実にたどり着くことができる日は来るのでしょうか。
source : The New Scientist, NewYork Post