アメコミ界屈指のヴィラン・ジョーカーの誕生をホアキン・フェニックス主演で描いた衝撃の問題作『ジョーカー』は、公開から3週間経った現在全世界で8億ドル近い興行収入を記録しており、間違いなくコミック映画史の歴史に残る1本となっています。
「バットマンのおなじみの悪役」というキャラクターのジョーカーがなぜこれほどまでに世界を巻き込むブームになったのか。そこにはトッド監督が独自の切り口で描いたジョーカー像というだけでなく、心優しい青年アーサー・フレックという人物を演じきったホアキン・フェニックスの演技力によるところが大きいと言えます。
『ジョーカー』の撮影監督を務めたローレンス・シャーは、撮影中に起きたホアキンの才能のほどが窺えるエピソードを明らかにしました。
ホアキンは『ジョーカー』の撮影中、度々台本には無い行動を即興で行い、それがそのまま本編に使用されたシーンがあります。その一つがアーサーが冷蔵庫に入るという印象的なシーン。
「彼(アーサー)が電話ボックスにいるシーンや階段を上がるシーンなど、いくつかのシーンはかなり綿密に計画されていましたが、全く打ち合わせがなかったシーンもありました。ホアキンが冷蔵庫に入り始めた時も、あれは打ち合わせに無いものでした。ホアキンはもしアーサーが重度の不眠症だったらどういう行動をとるか、って考えていたんです。我々は2台のカメラを設置して、彼が自由に動けるように撮影していました。そして彼は最初の一発で(冷蔵庫に入る)あの演技をやったんですよ。我々はみんな心を奪われてましたね。”彼は何をやってるんだ?冷蔵庫の中を泳いでるのか?”なんてことを考えたのを覚えています。 彼を見ているのはとても不思議で面白かったですよ。」
驚くべきはあのアイデアをワンテイクで撮影したということ!アーサー・フレックというキャラクターに完璧に憑依していたホアキン・フェニックスは、あの異常とも言える行動を即興でやってのけ、他の俳優では作れなかったであろう独自の「アーサー像」を見事に演じきったのです。
また、以前トッド監督はアーサーが初めて地下鉄で殺人を犯したあと、自宅でダンスを踊るシーンもホアキンのアドリブによるものだということを語っています。
ホアキン・フェニックスは第44回トロント国際映画祭にて、映画界への貢献を表彰する新たな俳優賞「トリビュート・アクター・アワード(TIFF Tribute Actor Award)」を受賞、「キャリア史上最大」との評価を受けています。
source : /Film