『ブラック・ウィドウ』や『007 / ノー・タイム・トゥ・ダイ』、『ワイルド・スピード / ジェットブレイク』といった大型新作映画の公開が延期になるなど、新型コロナウイルスの影響により甚大な影響が出ている映画業界。
『ドクター・ストレンジ(2016)』のスコット・デリクソン監督は、こうした映画の公開延期という現状に失望するファンに向けて、前向きに捉えるよう『ブレードランナー(1982)』と『ドクター・ストレンジ』を例にしてこのように述べています。
Additionally, we pushed the release date for Doctor Strange five months in order to get Benedict Cumberbatch. Had we not done that, we would not have had time to get the script right or figure out how to achieve a lot of the visuals. pic.twitter.com/NtpgX3EJow
— N O S ⋊ Ɔ I ᴚ ᴚ Ǝ ᗡ ⊥ ⊥ O Ɔ S (@scottderrickson) April 3, 2020
「こうした公開の延期によって作品全体のクオリティが上がると思ってください。脚本や製品の開発には多くの時間がかかるものなんです。リドリー・スコットと彼のチームは『ブレードランナー』を1980〜1981年の間に起きたストライキの間に完璧なビジュアルに仕上げました。」
「『ドクター・ストレンジ』も(主演の)ベネディクト・カンバーバッチのスケジュールに合わせて公開予定日を5ヶ月延期しました。ですがそのおかげで脚本を整理したり、多くの素晴らしいビジュアルを作り出す方法が生まれたんです。」
デリクソン監督が触れているストライキとは、1980年に全米俳優組合(Screen Actors Guild of America 通称SAG)により起きた大規模なストライキのこと。ビデオ映画、ケーブルテレビ、ペイパービュー(1回ごとにお金を払って比較的新しい映画をテレビで観られるシステム)関連の収益から、当然俳優にも支払われるべきギャラについての交渉に折り合いがつかず3ヶ月にも及ぶストライキへと発展しました。この間に、リドリー・スコット監督は頭の中にある『ブレードランナー』の街中のイメージを、具体的に映像化することができたと言われています。
『ドクター・ストレンジ』で主演を務めるベネディクト・カンバーバッチも当時は『SHERLOCK / シャーロック 忌まわしき花嫁(2015)』の撮影があったことで、『ドクター・ストレンジ』の参加は難しいとされていました。ライアン・ゴズリングやホアキン・フェニックス、オスカー・アイザックなどドクター・ストレンジ役に名だたる候補が挙がっていましたが、カンバーバッチを諦められないマーベル・スタジオは彼のスケジュールに合わせて公開予定日を5ヶ月延長したのでした。
新型コロナウイルスの影響で映画の公開が延期しただけでなく、多くの作品の製作中断が余儀なくされていますが、作品がより良いものになるための時間だと前向きに受け止めましょう。